歌と息の狭間、消えぎわ

歌の一番の魅力は、声の消え際の七変化模様にある。
語尾の跳ねるアクセント、音が消えるときの吐息の音、最後の息の揺れだったり。
歌というのは声が消えるか消えないかの狭間、声と吐息の狭間に『何かが宿る』ものだと思う。
その『何か』を言葉にすれば「歌い手の思いやその時の心の揺れ。色気や艶、不安、憂い、哀愁、悲哀、やるせなさ、気怠さ、はかなさ…」などと陳腐な単語を並べるしかないのだが。
『あふれ出た思い』『心の揺れ』『過去の経験』『過去の自分』『今の自分』。
歌声の消え際には歌い手が意識してコントロールできない『剥き出しの命』が宿る。
それは神々しい瞬間。
美しい。