ゲルマニウムの夜

俺は明確な殺意という激情を、自らの手を血に染めずに自殺に追い込むという狡猾なる方法で冷徹に処理しようとした。
思えばあの時、おれがあのまま追込み続けてAが自殺したとしても俺の心はみじんも痛まないだろう。
ゲルマニウムの夜」で朧が言うところの加害者の理想的心理状態というやつだ。
どのような事態に遭遇しようとも、自らどのような事態を創造しようとも、最終的には他人事的淡々ぶりに撤して生きていける。
おれはそんなところまできてしまったのか?
それとも俺は予めそこに居ただけなのか?