マルチナ

忘れもしない1999年6月5日全仏オープンテニス決勝戦
マルチナ・ヒンギスシュテフィ・グラフとの“新旧女王対決”。
選手としてのピークをとうに過ぎて、その名前すら聞かれくなって久しい、かつての女王シュテフィ・グラフ
自身これが有終との思いもあっただろう決勝戦、観客は、言動も行動も小生意気なヒンギスよりも蘇った女王グラフに熱い声援を送っていた。
マッチポイント追い詰めたグラフ、追い詰められたヒンギス、見守る観衆のグラフへの熱い思い、、
そこでヒンギスは打った、アンダーサーブを、、
ママさんテニスでしか見ることができない下からのサービスをあろうことか全払オープンテニス決勝のマッチポイントで。
そしてグラフは勝ちヒンギスは負けた。
グラフを讃える声、ヒンギスに浴びせられるブーイング、
会場に渦巻く罵声と称賛の中でヒンギスは、悔しさに顔を歪めていた。
その顔を見て、俺は「こいつはすげぇー」って、わかった。「思った」のではなくて「わかった」んだ。
ヒンギスは勝負を投げてアンダーでサービスを打ったわけでも、女王グラフの有終に泥を塗りたくてあのサービスを打ったわけでもなく、
あくまでも勝つためにアンダーで打ったのだと、俺にはわかった。
その結果が例え何万人もの客を全て敵に廻すことになっても構わないと。
一身に浴びるブーイングの中で彼女は、客に対するものでもブーイングに対するものでもなく、
純粋に勝負に負けたことに対しての悔しさに顔を歪めた。
俺は、世界中のテニスファンとは関係なく純粋に勝つことだけを求めるヒンギスが好きだ、そして、今のテニスを心から楽しみ笑みがこぼれるヒンギスも。
復活おめでとさん!