神になった男と、ブタになった男

タイム・アフター・タイム」をマイルス・デイビスばりにリリカルにサックスで吹いてみる。
とても、こっ恥ずかしい。
たまに音程を外すからなおさらだ。
誰かに聞かれたらきっと立ち直れないだろう。
とっととCDを入れ替えてデフ・ジャムのHIP HOPを流す。
リズムだけを頼りに、メチャクチャに吹く。
アドレナリンが溢れ、パブリック・エナミーが叫び、
エンドルフィンが駆け巡り
俺のサックスが悲鳴をあげる
狂う、ただ、ひたすら狂う、
真っ逆さまに。
そして、2曲で酸欠、パワーダウン。
コルトレーンは、コンサートで何時間も延々と吹き続け、
さらにホテルに帰ってからも吹き続けたという。
俺は2曲で10分。
トレーンは1曲、数時間。
恐ろしい…。
だが、こんなことで、へこたれる俺ではない。
あっちは、神になったと言われる男、
こっちは、真人間になれない男。
差があってあたり前。
トレーンがバリバリ吹いている「グリーンリーブス」をかける。
勝負じゃ!
無謀にも「人」の出来損ないが「神」に挑むのだ。
流暢にテーマを吹くトレーン
テーマをミスったのを切っ掛けに、すぐにインプロに走る俺
万を時してソロに突入するトレーン
エルビンのドラムが煽る
指がもつれてスケールアウトし始めた俺、
それを引き戻すかのようにテーマを弾くピアノ、マッコイ
絶妙のタイミングで叫ぶトレーン
「うるさいぞトレーン黙っていろっ!」とばかりに
天然調子っぱずれのスケールアウトで吹き散らかす俺
螺旋を描くトレーン
ブタの喧嘩みたいな俺
「神とブタ」。
ふっふっふ、「神と人」から、また一つ差が広がったようだな。
俺は、ハンデが大きいほど燃えるタイプでね。
ブヒブヒブヒ〜っ!