スーパーレッスン

日曜の朝、3チャンネル「スーパーピアノレッスン」、
ミシェル・ダルベルトの熱い指導を見ながら
コーヒーでも啜ろうとテレビを点ける。
ピアノの音は聞こえどミシェルの姿は見えず、
僕のミシェルや、今何処?
あぁ、そふいえば「スーパーピアノレッスン」終はり、
スーパーバレエレッスン」が始まつたつたのだつた。
ピアノに合わせてやたらと手足の長い男と女が、
二人仲良く飛んだり跳ねたり回ったり。
きっとお花畑に飛ぶ蜜蜂のカップルなのね、
と思たら違うくてどうやら「ロメオとジュリエット」というバレエらしい。
ロミオでなくて頑なにロメオなところが、
侵略してきたハリウッドアメリカ帝国主義に対し、
レジスタンスとなり抵抗するフランス文化最後の砦なのだ、たぶん。
「ロメオ…、Oh!ジュリエット!」
女が男を惑わしてかわす、
男がいじけて膝まづく、
男の後ろからそっと女は近づき、背中越しにキス…。
日曜朝からベタベタのラブロマンス。
それがねぇ、まったくいやらしくなくて、ピュアで自然で、ため息が出るほどに美しいのだ。
ラブと日常が一本繋がりの、おフランスだからベタベタのベタでもナチュラルにして美しいのか?
もしこれが日本人やったら瞬時にブラウン管は粉々になっていただろう。
途中で生徒の演技を止めて「ノンノンノン」と言いながら登場する先生。
こやつがまたメロドラマから抜け出したかのようにメロメロの熱々なのだ。
先生がお手本として情感たっぷりに踊ってみせる。
一つの舞いに感情が滲む、
恋心のように喜びに満ち、哀しみの淵に座り、
儚く虚ろう。うぅ、くさいっ!
バレエがこれほどまでに情緒豊かでドラマックで、くさいものとは知らなかった。
ただ氷の上を遮二無二にクルクルと回っているような、かの競技とは、
どだい芸術が違うってものだ。
それにあれは、競うものであるから仕方ないのだろうが、
他選手が尻餅をついたのを喜ぶあの浅ましさは、なんとかならないものか?
なんてことを書くと全国の氷上サーカスピエロ競技ファン7000万人から抗議のメールが殺到するかもしれない。
スーパーバレエレッスン
ピアノからバレエにシフトした日曜の朝、
ミシェル・ダルベルトからバレエのくさい先生へと熱い血はしっかりと受け継がれていた。