清水の舞台で

師匠夫婦が西国巡礼から帰ってきた。
関西近畿33か寺を奉納太鼓を打ちながら巡る旅。
その精進落としとして、大崎の日本海という店で食事をするという。
師思いの俺は「それは大変だ!」と急いで駆け付けて、
刺身、寿司、芋焼酎を平らげるのを手伝った。
観光客や修学旅行生でごった返す京都清水寺で、
師匠が全身全霊でお経を唱えたら、
それまで騒いでいたガキんちょどもがピタッと動きを止めて、終わるまで神妙な面持ちで見ていたという。
師いわく「読経を聴き神聖な気持ちになったんだろう」。
弟子いわく、騒いでいて「喝っー!」と大声で叱られるのが恐かったのだろう。
芸事以外ならたいてい、師より弟子のほうが的を射ているらしい。
一年前、大病を患い医者から余命三ヶ月と宣告された師匠、
ついに奇跡的な復活を遂げ、
清水寺で吠えた。