音は生まれては消えていく

全治半年の腰骨折をわずか二日間で治した朝青龍
モンゴルでサッカーボールを蹴飛ばす
俺としては、横綱としての品格よりも朝青龍としての人格のほうが断然面白いのだが
いざ「朝青龍というノンフィクション」が「横綱というフィクション」に勝てるかどうか?
と問うては
本物が虚妄に勝てたのは18世紀中頃までのお話し
リアル朝青龍は勝てないだろうな
もし朝青龍が見事に横綱という虚妄をうっちゃったら、新たに朝青龍という役を作らねばならない
今場所は三大関横綱朝青龍という上位陣です
朝青龍の役に付いた力士はもちろん何をやってもよろしい

なんとなく魔がさしてしまったおれは、今まで封印していた文章をついつい読み始め
ボコボコに凹んでしまった
生まれては消えるいくつかの衝動を軽くいなしながら
たまたま聴いたのがファラオ・サンダースのテナーサックス
その音の素晴らしさに初めて気付き
「なんであいつを使うんだ?」と記者に問われたコルトレーン
「好きだからだ」と答えた意味をすっかり理解できた気になり
はて?何度も聴いてきたのになぜ今まで「音の良さ」に気付かなかったのか?
それは、俺という奴は日々うつろい流れていて、「その時」にしか感じることができない音があるため

中国産のソプラノサックスのバネが弱くてKeyが動かないところを輪ゴムで無理矢理に動かし
もし俺が、井戸の底でいい音を出した時
それをいい音と感じてくれる人はきっと、同じ井戸の底にいる人であるから、
それはそれで哀しいことであるのだけれど
井戸の底に降りてみて初めて聞こえてくる音が聞こえてよかったね
とはいっても、みんながみんな井戸に落ちてきたら…それは社会に穴がポコポコ空いているからでしょう
もちろん井戸になんか落ちないほうがよろしい