ピーマン

先週土曜日、音楽マニアのYちゃんが7階に上がってきた。
段ボール2箱、紙袋2つに入った膨大なレコード盤を持って。
「Yちゃんわかったでー、
病的なレコード収拾癖のせいで、自宅アパートの床が抜けてしまい
いよいよ保管場所に困りはてて、会社にレコードを持ってきたんか?」
Yちゃん汗だくになりながらも気持ち悪いくらいニコニコして答えた。
「いやね、この下3階の物置きを片付けてたら、
ぎょうさん出てきた出てきた古いレコードが。
どうせ全部捨てるんならいいやつを貰おうと思ってさ。
2、3日ここに置かせてくれる?」
シングル、LP合わせて軽く200枚以上はありそう。
キャンディーズからポールモーリアまで幅広く
古賀政男からノーランズまで節操もなく。
購入者の好みがまったく見えてこない。
Yちゃんによれば盤の傷み具合からして、ほとんど聴いていないらしい。
つまり、給料のかなりを注ぎ込み買い続け、
聴く暇がないという病的レコード収拾癖。
これは一体、誰の置き土産か?
今まで定年退職などで去っていった人を何人か思い浮かべる、
が、どの人もしっくりこない。
Yちゃんの顔をジーッと見る。
古賀政男からノーランズまで収拾してしまう病的なミスターX」と
越路吹雪からピンクフロイドまで収拾してしまう病的なYちゃん」
…うーん、似ている。
わかった!君が生き別れた双子の兄弟?
あるいは君のドッケンベルガー?
今日の昼休み、物色したレコードを取りにきたYちゃん、
スピーカーから流れでていたジョン・ゾーンばりのおいらの気狂いサックスに、すっげぇ嫌な顔をした。
はっはっはっ愉快愉快!
きっと昼ご飯で腐ったピーマンでも食ったんだろう。