@五月忙し楽しや五月の二日目の弐

静かに響き渡る鎮魂歌の後に力強い本ばたきを打つ、
続けて激しいシャバタキに入る
それはまるで容赦ないコンストラストで見せるモノクロのポートレートみたい
毎日毎日、黙々と稽古を積んできたYの歌と太鼓がここに華開いた。

続けてFさんの太鼓
下打ちは俺が勤めさせてもらう。
車椅子の上で身体を揺らし左手一本で打つ太鼓、全身全霊
魂を込めた一打一打。
下打ちの俺も負けじと撥を握る手に力を込める。
稽古では中々合わせることができなかった、最後の締めもピッタリと決まり、
大きな拍手をいただいた。
素晴らしかった、思わずFさんに握手を求めた。

雨上がりの曇り空、黄八丈の着物が映える。
Sさんの太鼓節が辺りに染み渡る。
「太鼓叩いて〜人寄せ寄せてなぁ
わしも会いたい
人がある〜♪」
本ばたきが徐々にスピードを増しシャバタキに切り替わる。
「今こそ太鼓の音だよ
その手をかわさず
打ちやれきりやれ
きたまだまだまだ〜」
掛け声が、もっと打てもっと打てと囃し立てる。
ド、カカカ、ドドンカカカ
ふち打ちを織り交ぜ軽快に叩くSさんの手からカラフルな紐が飛んできた。
ミサンガ?
切れると願いが叶うというが
打ち終えてSさんに渡したら、
「あれ?ほどけたぁ?
打つ前、師匠に固く結んでもらったのに」
「願いが叶うんじゃないですか」と声をかけて、さてと、最後はおいらの出番。