三人のダンサー、三人のミュージシャン+一匹

6月埼玉長瀞での、てのひらまつり
テント張りの舞台で八丈太鼓を打っていると、
舞台と客との間を一人の男が横切った
音も無く動きも無くすーっと
まるで生きている気配が無い、
生きてきた命の痕跡も無い、
もちろん生きていく明日もない
薄汚れた銀色の布を纏った全身白塗りの男。
初めて目の当たりにした暗黒舞踏の衝撃
青空のもとラブ&ピースなまつりで見た死の肖像。

9月中野のSpecialColorsパフォーミングナイト
ライトに浮かぶ女性は動かない
遠い過去に衝撃的な何かがあった、その時に魂が抜け落ちてしまった、
それから何日も何年も何十年もの間ここにこうしている
全ての動きを放棄してずーっと。
空っぽ人間がただそこにあるだけなのに
空っぽになる以前の命の哀楽が影となって実像を結ぶ。
aさんの眼はただの黒い穴ぼこ二つ
何も見ていない何も写ってない穴ぼこ二つ。

11月からSpecialColorsで始まったKプロジェクト
さまざまなバックボーンを持ったダンサー、身体表現者、映像作家、ミュージシャンが作る不思議な世界。
プロデュースするKさんのダンスは、見る者の感受性の絶対枠をポンと外してみせる
ある場面では、ただひたすらハンバーガーを食べ続ける男だった
ある時はただひたすらそこに立つだけの男。
それしかやってない男を注視する俺達は「この男はいったい何者?」「これから何が起きるのか?」さまざまな疑問や期待で頭を充満させる。
食べ続けるだけの男はいつまでも食べ続けているだけで何の物語も進行しない
立つだけの男にはただそこに立っているだけで、「何もせず」という意識もなく立ち「続けている」という意識もなく
ただそこに立っているだけ。
いわば「だけの人」。
男が「だけ」であればあるほど見ているこっちは妄想が膨らむ
男は俺達の妄想を突くこともなくいつまでもそこに立っているだけ。
ゼンマイ仕掛けの歩く人形は壁にぶつかってもその場で歩き続けるだろう?
我々には見えないんだその壁が。

白塗り暗黒死人
からっぽ人間
だけの人