@イメージング一幕目

先週火曜のKプロのお話し
舞台上でスポットライトに照らされた女性が一人、腕を前後に振っている
繰り返し繰り返し大きく。
「イメージしてください、
あなたは93才のおばあちゃんです。93才のおばあちゃんが腕を振っているのです」Kさんから声が掛かる。
女性ダンサーは93才のおばあちゃんになりきり腕をゆっくりと難儀そうに振り始めた。

「イメージしてください、あなたの背中には海が広がってます。
そして海には船が一槽浮かんでる。
あなたはそれを振り返って見ることはできないが
あなたの背中には海が広がっていて船が一槽浮かんでいます」
ダンサーは後ろに広がる海と一槽の船を思い浮かべながら腕を静かに振る。

「イメージしてください、あなたの前は広い広いかぼちゃ畑
あなたは栄養の粉を撒いている。
遠く離れたかぼちゃにまで行き渡るように細かい粉を散布しましょう」
ダンサーの手を離れた粉は優しく柔らかく霧のように広がっていく。

ダンサーが何らかのイメージを心に思い描いた時、動きが生まれ変わる。
それまでのどこかぎこちない動きから絵になる動きに、
いつまでもずーっと見ていて飽きないダンスに生まれ変わる。
よく考えてみてもその仕組みがわからない、
「こんな感じに動かそう」と意図的に動作を変えたわけではなくて、
別人になること、別の場所にいること、別の状況下で自分にはない行動をすることなどを、
ただ頭ん中で想像するだけで動きという現実が変わる。
そして確固たるイメージによって生まれた動作は驚くほどに自然なのだ。
自然な振る舞いであるがゆえなのかそれは絵画的に見えたり映画的に見えたり、ある時はなんだか哲学的にさえ見えたりもする。
想像から始まる不思議な身体美術
その仕組みは誰にもわからない