津波てんでんこ vs 道徳

深夜1時35分にメールが届いた。

閃き☆
夜分突然ですが!明日一緒に横浜学校講演行ってくれませんか?現場の空気を届けてくれたら嬉しいです。朝10時しゅっぱつっす☆お返事まってます

惜しいーっ!
☆マークのかわりに♡マークでエロムチ女子からのお誘いだったら「いきまっす!」と即答したところだが、送信者名にYスケとあったので、とりあえず
「明日朝返事するわー
9時までに返事する」と返しといた。

内容に探りを入れたら、どうやら横浜にある中学校全校生徒245人の前でボランティアの体験談を聞かせろ!という話しらしい。
まだふにゃふにゃと柔らかい中坊の245個の♡にクサビを打ち込むのもなかなか面白そうではある。
「OKいくでー
希望は、15分から20分くらい話しさせてくれ」
ほんとは2時間ほどしゃべって245人分の2.45人くらいの人生を変えてやろうかと思ったが遠慮して15分から20分くらいの要求。
まあ0.30625人の人生は変えられるだろう。

しかしながら直前に時間調整してみたら持ち時間7分となったので0.14291667人か
ふふふ、あいにくぼくは時間にルーズなものでね、ふふふのふ。

「みなさんこんにちわー、三陸地方には昔から『津波てんでんこ』という教えがあります。てんでんことは、てんでばらばらの意味で、
津波の時は親子も兄弟もなく、てんでばらばらに逃げろということです。
例えば、君たちが家の外で遊んでたときに「津波がくるぞ!」となったら、家の中にいる親や兄弟、じっちゃんばっちゃんにかまわずに逃げろ!ということ。
他人なんかに一切構わず、ただただ自分が助かるために全力を尽くせ!
それが『津波てんでんこ』
みなさんはこの学校で、博愛だの人類愛だの弱者保護だの助け合いだのお年寄りを大切にだのと習っていることでしょうが、そんなこと言ってたら全滅するのが津波です。
なんでも今のこの時間は一斉道徳という授業だそうですが、津波てんでんこは、その時がきたら道徳を捨てて本能で生きろと教えている。全滅しないためにな。」
と一発目に、「津波や大災害や天変地異の前では道徳なんて芥子粒ほどの役にたたないばかりか邪魔でさえある」とぶつけてから、本題である山田町や大槌町で出会った素敵な人たちの話しをしたら持ち時間を遥かにオーバー、
視界の隅でマキのサインがクルクル回ってる、が知ったこっちゃない
自分をスマートに削りものさしで測って時間の枠にはめこむ生き方には、なんの意味もない。
削らずにでかい面してそのまんま生きろ!俺が津波から学んだことの一つ。
「もう一つ話しを…(おーサインがクルクルまわっとるまわっとる)もう一つ話しを…(フフフまわっとるまわっとる)では、もう一つだけ話しを…(もっとまわれもっとまわれグルグルまわれ!楽しいなあ!)
最後になりましたが、みなさん被災地にがんがん行ってください。行けばやることやれることいっぱいあります。避難所で子供たちと遊ぶのもいい、町の人に元気よく挨拶するだけでもいい、チャンスがあったらどんどん行ってください!」

あとで先生に「うちの生徒がざわつかずに話しを聞くことができた最長時間記録です」言われた。
そりゃそうだろ、あんたらは命が輝く話しも命が消える話しも心を抉る話しも胸が潰れる話しもできないからな。