5月7日その弍

「Sシハタですー!」
音程でいうとミソファミソミーかな?
2つのソ「シ」と「で」にアクセントつけてくださいね。
と、前に書いたが実のところこの音程が正しいかどうか自信がない。ぼくは音感ゼロなのだ。家にあるキーボードを弾いてみりゃいいのだが、なぜかそのキーボードが洋服置き場になっていてだな…、そこでだ
☆ミュージシャン仲間へお願い☆
今度お会いした時、ぼくが「Sシハタですー!」と言うて聞かせるので、音符にしてくださいお願いします。

午後三時過ぎ「Sシハタですー!」のSシハタしあわせ牧場に到着、ここは宮古市北部の山の上にあり実に空気が美味い。
牧場名に平仮名で「しあわせ」と挟んであるのがSシハタさんの人柄を表しているような、いないような。

プレハブ作りの事務所に入ると、インスタントコーヒーをさも当然のごとく砂糖入りで入れてくれたSシハタさん。
事務所の壁に掛かる数々の賞状の狭間にはなぜか、カウボーイハットを被った村長がギター片手に歌っている写真があって…、これはあんまし突っ込まないでおこうっと。
「私は、第一次産業第二次産業第三次産業を全て足した『1足す2足す3は、第六次産業』をやるんです!」キリっ!
Sシハタさんが目をキラキラさせて語るプロジェクト  of  第六次産業とは、ざっくり言うと牛肉の生産者である自分で焼肉店をやるということらしい。
ちと、ざっくりすぎたか。笑
「焼肉?ん?Sシハタさん前は肉牛やっていたというけど今は乳牛オンリーなんじゃね?」
「肉は、知り合いから仕入れます」きっぱりと即答。
第六次産業敗れたり!早っ。
最初に繰り出したジャブでいきなりノックダウンとは、思いもよらない展開にこっちがうろたえてしまったぜ、笑。

Sシハタしあわせ牧場を案内してくれた。
ここからグルっと一周、鉄道レールを引いて遊園地にあるような機関車を走らせたい!ここにはソフトクリーム屋を作って!
夢を次から次へと語るSシハタさん、採算は二の次三の次なようで、聞いていて実に楽しいっス。

搾乳の時間だというので牛の乳絞りを見学させてもらった。なんでも一年365日毎日欠かさず朝と夕に搾乳しなくてはならないそうだ。それをずっと休まず一人でやっているのだから、まさにスーパーマンだな。

牛…、
でけぇーっ!
今までぼくは牛を侮ってましたごめんなさい。
牛の図体は図鑑で見る恐竜より遥かにでかくて、印象だけで言えば小さな軽自動車よりも大きい。
これまた顔が、でけぇーっ!
先月まで勤めていた冷凍倉庫に、テレビショッピングの撮影でしょっちゅうヨネスケが来ていたが、そのヨネスケの顔もかなりでかかったが牛もでかい!
つぶらで可愛い大きなお目目は、わかり易く例えれば、セパタクローのボールを一回り小さくしたくらいだ。

ずらりと並んだ牛20頭がバケツに顔を突っ込んでお食事中。
目の前にいる5、6頭が食事の合間にぼくをジッと睨みつけるわけさ。「あんた誰だい?」「何しにきたん?」「見せもんじゃねーぞコラ!」
ときたま頭を前後に突き出して威嚇するもんだから、おらおっかなくておっかなくて足がすくんでしまった。
「いやいやどーもどーもこんにちわ!お乳の張り具合いはどうですか?いえいえめっそうもない、私なんか何のテクもないのでとてもとてもみなさまのご期待に添えそうにありません。まったくもって経験不足でして、人間のほうでまだまだ練習を積まなければならない修行の身でして…、そんなわけで出直してきますね三年ぐらい、そぉーっと出ていきますので、どうかお気にになさらずにそのままそのまま」

Sシハタさんが、たった今絞ったばかりの牛乳(うしぢち)を「一度沸騰させて飲むといい」と言ってヤカンに入れてくれた。
どばぁーっと2リットル?3リットル?量が多過ぎるんですけど。
絞りたてだからなんとなく特濃牛乳や成分無調整牛乳を想像してたのだが、飲んでみたらそんなに濃ゆくもなくてサッパリ味、クサくもなくクセもなく実にクリアな味。
なんでも他の牛乳の二倍の値がする高級乳だそうで、どうやら餌が違うらしい。

そして、
Sシハタさんが牛一頭は入ろうかという馬鹿でかい冷凍庫から取り出したのは、
いよっ!待ってました!
肉の塊がどーんっ。
おぉ〜でけぇ〜!この日一番のどよめき。
そしたらみなさんテキパキと動くこと動くこと、かつてないほどの連携プレーを発揮した。
鉄板と網を用意する、薪を集める、蒔きストーブに火を付ける。村長は研ぎ石がないとわかると湯呑み茶碗の裏で包丁を研ぎ出した。やっぱこの人すげぇーわ。
凍ってる肉を薄く薄くスライスして、人参の皮むいてと。
さっきもらった一升酒を開けて乾杯!
あとは、もうジュウジュウ焼いてガンガン牛肉を喰いまくる喰いまくる。なーに誰に遠慮をするものかっ!
なんでもこれは去年、捌いた乳牛だそうで、「ハフハフそうですか、そうですかモグモグモグ」ってなもんで手と口は休む暇もなく。
ふと、Sンが尋ねた
「名前はなんですか?」
「フウタです」
箸がコンマ5秒止まっちまったじゃねーか
名前がついてんのかよーっ
「フウタありがとう!」
「フウタおいしいよー」
「フウタ喜べ!次は醤油で喰ってやるぞ」
フウタよ!お前をおれの血と肉にしてやるぜ、ワォーン!
「さて、そろそろいきますか?」と言いながらSシハタさんがいじりだしたのは、飲み屋からもらってきたという往年のレーザーディスクカラオケbyたぶんパイオニア
それからあとはもうすっかり時間を忘れて大カラオケ大会  in  Sシハタしあわせ牧場。
「ハァーテレビも無ぇ、ラジオも無ぇ、車もそれほど走ってねぇ…
おらこんな村いやだーおらこんな村いやだー♪」って熱唱する村長、まさにリアルバージョンじゃん!腹を抱えて笑い転げて宮古の夜が更けていく!