トランスの「正しい使い方」

君はトランスをバカにしているだろう!
いや、きっとバカにしている。
キックがドッドッドッドッときて単純なメロがパラールラーラーと流れ、
スネアが入りドッタドッタドッタドッタとくる、
シンベがビョンビョンビョンビョン、ハイハットが裏を刻みドッェドッェドッェドッェ、
オカズが時おりウーアーーウアーときて、やっと静かになったかなあと思ったら決まってドラムロールがタカタカタカタカタカタカタカタカデデデデデデデデーーーーーときてまた懲りもせずドッェドッェドッェドッェと。
君はトランスをバカにしているだろう!
キック、ベース、メロ、スネア、ハイハット、オカズを抜き差ししながらつまみをいじくって「はい、できあがり」と。
ああそーさ、俺はバカにしていたさ。トランスなんてガキがパラパラという「盆踊り」を踊るための音楽だってね。
この前CD屋でレゲエと間違って試聴してしまったんだ。「なんだゴアトランスかよー、チェッ」みたいな。
けどこれも修行じゃと思い辛抱して聴き続けてたんだ。
そしたらね「なんやサックスでからむの簡単やなあー」って気付いてしまったんだ。
メロもリズムも単純な上にずーとループしているから、スケールを掴まえるの楽だし、からむの簡単。
モードからアウトするのもフリーにいくのもまた戻るのも「これは行けるぜ」と気付いてしまったんだ。
トランスの大空をコード、モード、アウト、フリーという翼で自在に飛べるんだぜ!
トランス最高ーー!ゴアトランス最高ーー!
トランスをバカにしている君は、トランスの「正しい使い方」を知らないからなんだ。
ジョギングのペースメーカーでもいい田植えの時のペースメーカーでもいい、もちろん激しい夜のお供でもいいさ。
トランスは使い方しだいなのさ。

だから、おらがトランスをバックにサックスを吹いているのを某埠頭で見かけたとしてもバカにしないでください。

どーか、ぼくを、いじめないで・・・・。

コルトレーンが生きていたらきっと今頃トランス専門のクラブやライブハウスに乱入しサックスを吹きまくって「つまみスト」たちを駆逐してヒーローになっているだろう。
3時くらいまではね。ずーっと吹き続けると頭がフリーになってしまう人だからさ。そしていつまでも吹くのやめない人だしね。
アドリブが興に乗りすぎて吹き続けたトレーンは「だって止まらないんだ」と。マイルスデイビスが睨みつけて「そのマウスピースを口から外せばいいんだぜ」。
好きだぜトレーン!愛してる!