ぶんぶく蛇窯のつづき

Kさんはいつもニコニコしている。
何十年もに渡る孤独や不安さまざまな困難を、創意工夫と情熱によって乗り越えた果てにある笑顔、
とても優しく暖かい。
手作り窯を見せてもらった。
のぼり窯と蛇窯。
全長七メートルの蛇窯はまさに人を丸ごと飲み込む大蛇のごとく、口をぽっかりと開けていた。
からっぽのこの腹に、練り上げられた壺や茶わん、とっくりなどをたっぷりと食らい込む、
口には幾多の薪をくわえ、その薪は火となり炎となり、皿を焼き器を焼く。
そして彼は人であることを止め、五日間不眠不休で薪をくべる。
炎を喰らう蛇に取り憑かれて。
今度の個展は新宿のデパートで残暑厳しい九月。
窯焚きは夏の真っ盛りらしい。灼熱地獄。
土と炎と蛇と、命を掛けた孤独な戦い。
まったく芸術家って奴は…、、もうちっと楽に生きれないもんかね。
冷たく眠っている蛇の窯、とても生々しく神々しく、