「9.3sun」の夜。ステージ1♪

「9.3sun」の夜。
それはマーカス・ミラーのベースから始まった。
「東京Jazz2006」国際フォーラム。
いつもの皮ハットを被ったマーカスが登場すると会場は拍手と歓声に包まれた。

マーカスバンドには前科がある。
去年「東京JAZZ2005」に出演した時、
彼らは観客の熱狂にのせられ、演奏を止めることができなくなってしまった。
拍手、歓声、嬌声、アンコールの連続。
そしてついに、あろうことかファイナルを飾るハービー・ハンコックバンドの演奏時間に食い込んでしまった。
なんて素晴らしい前科なんだろう。
時間を気にしながら「ハービーに叱れる」と言いながらも
ノリノリでベースを弾いてくれたマーカスを、俺たちは覚えている。
俺たちは声を揚げ、手を叩き、口笛を鳴らし彼らを迎えた。
マイルス・デイビスの曲「ジャン・ピエール」。
マーカスの変幻自在のベースが炸裂する。
ミュートトランペットはどこまでもリリカルに響く
サックスはブルースを歌いあげる。
マーカスが即興でフレーズを奏でれば
すぐさまそれをそっくりまねてブルースハープで吹いてみせる男
ファンキーにブルージーにコミカルにと七変化するベース
負けていないハープはベースフレーズをそっくりまねながら、飛び跳ねる。
ブルースハープの男はハーモニカの裏にマイクをくっつけて吹いていた。
内股で体を沈めてマイクをあてて顔を前後させて吹く姿は、
なんだかとてもエロチック。
そう、それはまるでエロビデオでお馴染みのあの光景。
黒いマイクはマーカスの「それ」なのか?
会場は熱気に包まれた。
アンコールを終えてマーカスバンドが退場した。
次のステージまで少し時間あるだろうと思い、みながトイレへロビーへと席を立ちはじめた、
その時、マーカスバンド全員が再びサッと現れ演奏をはじめた。
ビートルズの「カム・トゥゲザー」
俺たちは、嬉しくてありがたくて手を突き出し声をあげた。
なかなか、拍手を終え席を立ち始めた客の前に再び現れられるものじゃない。
カッコイイぜ!世界NO1カリスマベーシスト!

こうして「東京Jazz2006」は幕を明けた。
「9.3sun」の夜。