俺とカモメとキツネ猿

一昨日夜のサックスは、すごく気持ちよかった!
と、書くと必ず「サ」と「セ」を間違って読む奴がいるんだよなあ、
そう、君みたいに。
確かに君の脳みそが示すようにエロはとても大事だ。
エロがなければ生命は誕生、継続しない。
この生命世界で、今も昔もこれからも最も重要な課題が「エロ」である!
それは君と俺とフロイトの一致するところである。
ただ残念なことに、フロイトは「エロス」の対立項に「タナトス」を持ってきた。
これは大間違いで、
タナトス」は「エロス」に対立するものではなく、
「エロス」に含まれるものである。
「死の潜在的願望」はおろか「死」そのものさえ「生」の中にしか存在できないのだ。
そして「生」と「性」は、
一つのものを別の角度から見ているにすぎないということに、
我々は気付かなければならない。
フロイトに会ったら、教えてやらねばなるまい。
一昨日夜のサックスに話をもどそう。
KYOTO JAZZ MASSIVE の曲をかける。
いわばクラブジャズっていうやつ。
アタックの効いた図太いベースが心地よい。
反復するメロディとリズム、ソロのサックスが優雅に空を舞い、
かすれた女性ボーカルがとても色っぽい。
クラブで大音量で聴いたら、陶酔と恍惚の彼方まで行けるだろう。
そこに突然現われたのは…、
超高性能F1マシンに乗り、時速350kmで突っ走りながら、
わけわかんねぇー言葉を「ギャーギャー」喚き散らしている、
狂ったキツネ猿。
俺。
俺の気狂いサックスは、キツネ猿の鳴き声によく似ている。
かつて吹いていた俺のソプラノサックスは、カモメの鳴き声に似ていた。
会社の屋上で一心不乱に吹いていたら、
東京湾じゅうのカモメが集まり、俺の頭上で旋回し始めた。
マダガスカル島でアルトを吹いたら、
島じゅうのキツネ猿が集まってくることだろう。
俺のサックスは、カモメやキツネ猿の心にしか響かない、らしい。
人間様が「ウルサイ騒音」にしか聞こえないのは、
きっと彼らの心が濁っているからだろう。
俺の心は澄んでいる。
だから俺のサックスはとても気持ちいい。
俺とカモメとキツネ猿にしかわからない快感。