このバチあたりめ!

明日、明後日と続けて人前で太鼓を打つ予定があるのだが…、
困った。
ここ最近さっぱり、いい音が出ないのだ。
八丈太鼓の本ばたきに独特な、芯があり尚且つ含蓄ある音を出そうとするんやが、
バチッバチッバチン!
ただペラペラの固い音ばかり。
力み過ぎもあるんやろうけど、そればっかじゃないような…と思い、
ばちをじっと見つめる。
…?!
なななんと、ばちの長さが、右と左で4、5センチも違うではないか!大変だぁ大変だぁ!!
とっとっと、これはこれでいいんです。
わざと左手用は右手用より短く作ってある。
おいら、人間がもともと世間様に対して斜に構えるようにできているので、
太鼓に対しても当然しごく、斜に構えて立つ。
すると左手は太鼓の皮に近くなり右手は遠くなる。
ならば「左手は短いばち、右手は長いばちのほうが、打つのに楽ちんだわ」というわけだ。
このへんの怠け者に特有な発想思考回路が、
そこらへんに転がっている真面目な太鼓打ちと一線を画すところである、
と同時に、かのニュートンアインシュタインと似ていて非なるところでもある。
右左の長さはてでれこでいいとしても、なんかどうもしっくりこない。
軽くコンクリートの床を叩いてみた。
「カンカン!コンコン!」
???
「カンカン!コンコン!」
ありり?ずいぶんと音が違う。
左の音が硬すぎる。
なるほど手で触っただけで木の硬さが全然違うのがわかる。
見た目はそっくりなのに材質が違うんやろか?
ちゃんと太鼓屋さんでバチを買わずに、
100均ショップでそれっぽい木を2本、コイン2枚で買ったケチンボがいけなかったのか…。
あるいは、今まで一年余り使ってきて今頃になって気付いた俺が、馬鹿なのよ。
まぁまぁ、右と左で音が違うのは変人28号のおいらとしては、むしろ望むところなんだが、
ただし、これが逆ならね。
左が軟らかく右が硬くなら、今のおらが望むサウンドになっただろうに、残念。
なんとか細工できないものかとばちと睨めっこ。
そして、本番直前に手慣れた道具をいじるという暴挙に…、アーメン!
「未熟な奴ほど、己の技量不足を道具のせいにする」という内なる声を、
軽く蹴飛ばしながら。
ボカっスカっ!