手のっぴらが三つ

手のひらまつりの外れの外れの原っぱで一人黙々とトランペットを吹く青年。
おいらは「私、怪しくないあるよ光線」を出しながら近寄っていく。
「あっ、どーもども、こんちわ!」ニコッ。
「こんにちは」オヤっ?
「トランペットぉっ!
かっくいいですねー!
いえいえ、わたくし怪しい者ではございません。
実は、ほれそこの手のひらまつりで1時から和太鼓を打たせてもらうんですが、
まだまだ時間があるので、川原でコソコソとサックスを吹いて遊んでいたんですよ。
いやいや前はアルトを吹いていたのですが、
どうしてどうして今はソプラノサックスで、
ほれほれ、管が曲がってなくてスーッと真っすぐでしょう。
まるで私の心のように真っすぐで…」ニカァ。
怪しい奴ほどよくしゃべるらしい。
「1時から太鼓ですか?俺達、その後です!
2時から演るレゲエバンドでトランペットを吹きます」ハイッ。
「そうですかレゲエでトランペットですかぁ、いいですねー、
行きます行きます見に行きます!
練習のお邪魔して申し訳ありません、では後ほど」ペコッ。
「いやいや」ニコリ。
「どーもどーも」ニコーリ。
足が長くスラッとスマートでイケ面、尚且つ実にさわやかな青年だ。
ほっといても女がワラワラと寄ってくるタイプ。
そんな好青年に、人類滅亡計画はなかなか理解されないだろう。
やはりこの計画は、手足が短くて扁平足で「ザ・日本のお百姓」そのまんまの俺様が、
女にモテない腹いせにコソコソと独りで建てるような、
…もとい、欲ぼけした人類から地球を救うために人類を愛のムチでペシペシと叩くという崇高な理念の下に、
孤独なおいらが、押し入れの角で重箱の角をつつきながら立案遂行せねばならない類いのものなのである。
肩を落とし石ころを蹴飛ばしながら、トボトボと手のひらまつり会場へ。
本場インド仕込みのバカ美味レインボーカレーを食い一気に元気になる。
目の前の缶ビールに
「まだよまだよ出演が終わってからよ」とよだれを垂らしながら、
何気に「師匠、今何時っすか?」と聞いたら、
「ええっと今12時50分だから…、
あわわわ、出演10分前だっ!」
やばいっ!バタバタバタ…、
トイレトイレトイレどこ?
太鼓太鼓太鼓どこ?
バチはバチは?
ドタドタバタのバタンパタっ…。