@高円寺の夜、中野の朝、二曲目

女性ボーカルhさんがギターを弾きながら歌う。
無力無善寺の狭い空間を浮遊する声、
それは、やがて空高く自由に羽ばたく鳥の声になり
地面に這いつくばってでしか生きられない俺達を、哀しみ哀れみながら天に昇ってゆく。
歌声を追うかのように、ペインターmちゃんの筆が走る。
赤いライトに照らされてゆらゆらと現れるサイケデリックな世界。
迷いのない筆に引き込まれる。
黒い紙の上に咲いた幻想の華は我々を日常から解放してくれた。

インドのお香が漂いYさんのギターが始まった。
細かく揺れるビブラートがとても心地いい
メチャクチャ上手い、どれだけ練習すればこんなに上手く弾けるようになるのか?
ギターの才能がマイナス値のおいらには想像すらできない。
徐々にスピードが上がっていき、ついにギターはシタールに化け、あたりの温度を一気に上げた。

Rさんの太くて低い声が静かに響き始めた
ホーメイのカルグラ。
何人もの坊さんが一斉に読経をしているような
あるいは裂けた地面から響いてくる地球の唸り声
地鳴りするカルグラの遥か上空をhさんの声が漂い回り滑空し始め
Yさんのギターが地平の先のインドを奏でる。
目をつむれば広大なる平原が、空高く舞う鳥が、風の匂いさえ感じられる音世界。

最後の男が歌い始めた。
ギターの弦を切らしながら汗をかき唾を飛ばし熱唱する
●スターベーションの歌。
なんともストレートな擬音をそのままに
「午前3時半の部屋はイカ臭い」と歌う。
男のもっとも滑稽なる部分を、微塵の脚色もフィルターもなくどこまでもリアルに歌ってのける
この男、ただ者ではない。
みんなが笑った、男の性を腹を抱えながら笑い飛ばした。

最後にマスターがSMの真理をレクチャーしてくれて無力無善寺のエロい夜を終えた。
羞恥をかなぐり捨てた先にあるエネルギーに圧倒された。