@売れる喧嘩は売らなきゃ損々の五発目

ので
おっちゃんに向けて親しみを込めた一歩を踏み出し握手の準備なんぞしながら尋ねた
「新潟のどこですか?」
ほんの一瞬、間があいてからおっちゃん
「そんなの関係ねー」と叫びながら掴みかかってきた。
「ギョエーーっ」
まさかこの期に及んで、そうくるとは思ってなかったからかなりやばかった、危うく髪の毛掴まれるとこだった。
空振りしてバランスを崩したおっちゃんの脇を擦り抜け走って逃げたよ
あのタクシーよりはモタモタバタバタだったけど。
しばらくアパートから遠く遠くへと走っていきグルリと遠回りして裏道で帰宅。
「新潟のどこですか?」とぼくが聞いた瞬間に
「東京に出稼ぎにきて仲間から誘われて初めて行った花月園競輪場、すっかり熱くなり新潟の家族に送る金を全部使いはたしてしまった。
負けをなんとか取り戻そうと消費者金融から三万円借りて再び花月園リベンジ。
玉砕。
宿舎に帰ると、かみさんから電話で「あなたどーなってるのよ」と叱られて
「今月末に二か月分送るから」とその場を取り繕い、初めての給料前借りをして再び花月園競輪場で最後の勝負、
待ちに待ったオールスター競輪決勝2006、さあ残り一周おーっと早くも4番車の井上昌己が一か八かのカマシで抜け出しました
「ようし行ったど、予想どおりや、あとは番手2番車高木隆弘がゴール前にちょいと井上を差して一丁上がり!
取ったぞ2→4裏無し一本勝負、かーちゃん待っとれよすぐに金送るからなー!ってな。
そら行け高木さあ差せ高木やれ高木おい高木こら高木ぃー、たぁーかぁーぎぃーーーっ!」
高木差し切れず4→2。
「かぁーちゃーん!」
そのまま宿舎に帰らずに東京砂漠を放蕩徘徊して
2008師走、今ここに至り
「息子は元気にしてるだろうか?来春はもう中学生か。いやもう止めとこう今さら帰えれるわけがない、俺はもう何もかも捨てたんだ。家族も故郷新潟も。」
それで
「そんなの関係ねー!」
だったのだろう
か?