@夏の終わりに昔話、二ページ目

まだぼくが坊主頭だった中学三年生の秋の初め。
その時、目にした光景をぼくはうまく咀嚼できないままに今を生きている。

夕方に熱が出始めて早めに部屋にいき就寝、午前2時過ぎにトイレに起きた。
小便を終えて階段を上り部屋のドアを開けて、目に飛び込んできた光景にぼくは茫然自失、思考停止して石のように固まった。
部屋に入ると正面にベッドが置いてある。
奥が頭側で手前に足側の配置。
そして、空であるはずのベッドには偽者の俺が寝ていて…、
という話ではない。(そっちのほうが面白いがね、ついでにその時ぼくは入れ代わって実は今は…とかさ)
部屋のドアを開けた瞬間、理解を遥かに越えた現象を目の当たりにした。
入口に立った俺の右上あたりから鋭利な三角形の鏡のようなものが凄いスピードで飛んでいきベッドの上の枕を突き抜けて消えていく、
すぐさま俺の左上から同じ鋭利な三角形上のものが飛んでいき枕を突き抜けて消える。
また右上からヒュっと飛び枕を突き抜け間髪入れずに左上からヒュっ、右から左からと交互に…(音はまったくしなかった)
これはあとから思ったことだが、まるでトランプのシャッフルみたいに右、左、右、左、パタパタパタと正確無比の素早いスピード。
ぼくの視線は枕の中心点を捉えて離れず釘付け状態、頭を巡らして自分の上方を見ることなんか到底無理。
余りにもスピードが速いので鏡のような「何か」がなんであるのか?はっきりわからないのだが、
空間が尖った三角形上に切り取られて飛んでいってるのだと感じた。
フリーズ状態が解けたのは、急に体を切り刻まれてしまう恐怖に襲われたから。
それは漠然とした恐怖ではなくて、ここにいたら確実に殺されるという本能的恐怖。
叫び声を上げるのを押さえながら逃げた。
そして、親を叩き起こすために親の寝室をノックしようとした時に、