@夏の終わりに昔話、三ページ目

@夏の終わりに昔話、ニページ目の続き

まだぼくが坊主頭だった中学三年生の秋の初め。
その時、目にした光景をぼくはうまく咀嚼できないままに今を生きている。

夕方、熱が出始めて早めに就寝。トイレに起きた深夜に得体の知れない出来事に遭遇。体を切り刻まれるという恐怖にパニクる。
親を叩き起こそうと(正直言うと助けを求めようとしたのです「父ちゃん母ちゃん助けて〜」まだ坊主頭の中学生でしたから)
急いで父母の寝室へ。
明かりの消えている親の寝室を開けようドアノブを握った時、部屋の中の静けさにとても嫌な感じがした。
「この部屋の中にいるのは本当に親なのか?
世界全体が何かとんでもない事態になってるかもしれない。親父とお袋はもう何者かに乗り移られてしまってるんじゃないか?
この部屋のドアを開けたら俺は、親そっくりな何者かに殺される。」
(今思い返すとSF小説の読みすぎだろーと自分にツッコミ入れたくなるが、この時は信じられるもの自分だけという極限状態だった)
「くそっ、逃げなきゃ早く逃げなきゃ、この家から逃げなきゃ殺される」脳みそが一気に沸騰したように焦る、階段を降りるには自分の部屋の前を通らねばならない、ドアを開けたままなので前を横切る時に切り刻まれてしまうかもしれない。
ぼくは廊下の窓を開けて屋根に出た。
遠くの街灯でぼんやりとしか見えない屋根を端までしゃがみながら前進。
下を覗くとぼんやりと畑が見える。
暗くて畑までの高さがうまく掴めなかったが迷っている暇などなく、飛び降りた。
柔らかい土の上に無事に着地、そのまま道路に飛び出して走った、家から遠くへ遠くへと裸足のまま。
怖すぎて後ろを振り向くなんてできるはずなく、村の中心を貫いてる道を全力疾走。
深夜2時過ぎなので明かりのついている家もなく物音一つなく静まりかえっていた。
景色や家並に変わったところもない。
いつもの村の風景。
走り疲れて歩き始めたころには、だいぶ恐怖が薄れて落ち着いてきた。
母が勤めていた鞄工場の家の明りがついているのを見つけて玄関を開けた(田舎なんで鍵なんか掛かってない)