@てのひらまつり、ケンゴマン編

てのひらまつりは毎年、6月中旬に開催されている。梅雨時のど真ん中であるのにも拘わらず今まで雨が降ったことがない。
過去には天気予報の雨降り予想さえひっくり返してピーカン晴れにしたこともある。
その話題が出るたびに俺達は
「みんなが愛を持ち寄ってくるから雨が降らない」とか
「これぞ、てのひらポジティブバイブレーションだな」
などとわけわからないことを口走ったりしてた。
それが一転、今年は雨どころの騒ぎじゃない、ヒョウは降るわ暴風は吹くわで大騒ぎ。
大自然の洗礼はハンパない。
ファイナルステージ、満月クラブの面々がアバンギャルドなラッパを吹く中で俺達は和太鼓をバカスカと叩いてた。
すると灰色ブリーフ一丁の男が踊りながら乱入してきたので、わたしゃ彼の引き締まったお尻を撥でペチペチと叩いて遊びましたよフフフ。
お客さんに撥を配りそのまま会場参加の廻し打ちに突入。
ステージ上ではサックス、トロンボーンの乱れ吹き、ステージ前ではみんなの和太鼓乱れ打ちで大盛り上がり。
ルール無用の即席即興バンド、時間が過ぎてもなかなか演奏を終えることができなくなってしまった。
そこへケンゴマンが登場、
マイクで「ありがとー」と一言言うて終わりにしようとしたのだろうがバッテリー切れらしくマイク入らずに断念。
太鼓はドンドコ、ラッパはブギャビレーで生声なんてさっぱり通らない音の渦。
そこでケンゴマンはドラムスティックを握りスネアを叩きだした。
ことさら大きく手を揚げて右、左、右、左とスネアを打ち込んでいく満面の笑みで。
みんなはそれに合わせて太鼓を叩きラッパを吹く。
徐々にテンポが早くなっていくスネア連打にみんなも気持ちを乗せていく。
そして凄まじい連打の後に間をおいてバシっ!
「ありがとー!」
さすがケンゴマン締め方がうますぎるー。
ぼくは前回のてのひらまつりでの彼の言葉を覚えている。
「このてのひらまつりは毎年毎年倍々で参加者が増えていってます。来年は今年の倍の人数、再来年はさらにその倍。
この限られたスペースで参加者がどんどん増えていって、一人当たりのスペースが新聞紙より小さくなったら、みなさんどうします?」
自らは答えを出さずにみんなに「どうする?」と問い掛けるケンゴマン。今年は「夜、会場に散らかってた空き缶が朝には片付けられていた」と喜んでいた。
ケンゴマンは、心底「みんな」を信じているのだと思う。
彼の「ありがとー」はとにもかくにもあったかい。