@お不動さんまつり、8月6日広島

tエコさんが歌い始めた。
「あー、痛ましや痛ましや…」
椅子を奨められたのを断り立ったまま歌って語る。
服が全て焼け、ズルリと剥けた上半身の皮膚が爪で止まってぶら下がり、幽霊のごとく手を前に出しながら歩く人、人、人。
瓦礫の下敷きになった人を助けようとするが女一人の力ではどうにもならなかった。
川に逃げ込み左右の岸から迫る炎を水に濡らした布団を被り凌いだ。
そして、黒い雨が降り白い雨が降った。
tエコさんが涙を拭きながら語りかけていた相手は俺達ではないだろう。
あの朝、にんげんを奪われて苦しんでいる人に対して語りかけた。
俺達にとっては64年前の出来事でもtエコさんにとっては昨日のことであり今、目の前で起きていることなのだ。
それがどれだけ辛いことなのか。
それを人前で語ることがどれだけ強くて尊いことなのか。

またお話しを聞きたいと思った。
丸木美術館に行き原爆の図を真正面から見ようと思った。