@土日は江戸に行ってきた 三日目 浅草探検隊

「合羽」橋なのにかわいい河童の絵があちらこちらにある街。何十年後かには「河童橋」になっているかもしれない。
街の名が人々の日常に添う形で変わっていくのはそんなに悪いことじゃないと思う。
少なくとも権力者が代わる度に街や通りの名前がコロコロ変わるよりも。

探検隊の三人で調理道具店を一軒一軒出たり入ったりしながら麺棒を探す。
素材、大きさ、重さ、値段などなどなかなか「これだ!」という物には巡りあわない。
何軒目だろう、大きめの店の奥の奥の棚で望む条件の全てがマッチした麺棒を見つけた。
しかしここでただ闇雲に飛び付いて買ってしまうわけにはいかない。
一流の蕎麦職人を目指している俺達は麺棒には厳しいのだ。
mドリちゃんが店の人から量りを借りてきた、一本一本をグラム単位で重さを計ることにした。
俺は計る役、mドリちゃんは重さの順に並べる役、隊長kミーはただ見守る役。
220グラムから240グラムまで重さの順に並べる。
延々20本近く測っては並べ測っては並べの繰り返し。
そうやって我々三人はようやく同じ重さの麺棒を二本ずつ購入することができたのだ。
これでいい蕎麦が打てるかもしれないし、もしかして麺棒を撥にしたらいい太鼓が打てるかもしれない。

日が暮れて浅草寺近くの通りに行った。
右に左にいくつも灯っている赤提灯と店明かりに浮かぶ通りがなんともぼんやりと温かく「まるで江戸だなー」
ここだけ時間がゆっくり流れている。

江戸といえば天下泰平の世。
そりゃいろーんなところで軋轢や歪みがあっただろうが、とりあえず誰も戦を好まなかった。
誰も戦で儲けようとしなかった。
誰も戦で平和を勝ちとろうとはしなかった。
とにもかくにもまず不戦。
不戦→平和。
平和を望む者同士がなぜ戦うのかがわからない我々浅草探検隊の三人は、江戸の赤提灯の下で麦酒を呑み熱燗を呑んだ。

人はなぜ取るに足らないことで争うのだろう
そして争いは、なぜいつも決まって大きくなっていくのだろう
江戸に生きた人々の争い事を避ける知恵が、おちょこに浮かんだような気がしてグイと一気に呑み干した。
体が暖まったのはほんのわずかな一時だった。