3月23日〜31日

3月23日夕方
いわき市からいわゆる風評被害のとばっちりを怖れたのか大量の冷凍食品が入庫してきた。
くそっ!仕事が定時で終わらんわぃ!
これじゃピースボートのボランティア説明会に間に合わないじゃないか!と叫んでみた。
今日はすぐにでも石巻市に一週間以上行ける人限定の説明会だから、厳密に言えばぼくは対象外ではあるのだが。
YスケとKオリンが「行くっきゃない!」という素晴らしいノリなので、ぜひ彼らにマイナス25度に耐えられる防寒着上下をぼくの匂い付きで渡さなくてはならない。
小雨が降っていた。放射能の雨だろうか?
二人に「向こうではくれぐれも雨にはあたるなよ」と伝えるが「気にしていられないと思う」と答えられる。
君たちは日頃の行ないが悪くはないのできっと放射能の雨のほうで避けてくれるさ。

3月24日
築地から給料明細と三カ月分の交通費を届けにきたFクシマさんをつかまえて言った。
「会社を辞めて東北に手伝い行きます」
「うーん、いきなり辞めるのではなくて一週間なり十日なり有給を出すのでそれでボランティアに一度行ってみたらどうか?」と言うてくれた。
「でももう仕事を辞めて東北に行くと決めたことなので、お願いします」と頭を下げる。
「いくら保留を持ちかけてもダメか?」
ぼくは再び頭を下げるしかなかった。
「それなら今日持ってきた三ヶ月分の交通費をいったん持ち帰って後日必要分だけ渡すわ」
くそっ!二月分ほど余計に交通費を頂戴するという俺の壮大な目論見が見事に外れた瞬間だ。心の中でマイナス5万円と呟き涙する。
が、まあそれとて、使いもしないややこしい路線を通勤に使っていることにした不正請求のたまものなので文句のつけようもないのだが。

「いつ退職したい?」と聞かれ
「なるべく早く辞めて東北に行きたいが、ポッと抜けて会社に迷惑を掛けたくはない。なのでもし、ぼくが辞めて欠員補充するなら、冷凍倉庫経験者の即戦力の友達にあたって見ます。そしたら話しが早くなるので」と提案した。
「欠員補充するかしないかはT水側と話し合わねばならないので待ってくれ」と言われた。
うちの会社は15日締めだから、うまくすれば4月15日に辞めて17、18日あたりには東北に入れるかもしれない。

3月26日昼
NHKのニュースに石巻の模様が映った。並んで立ってるボランティアの映像の中にKオリンがいたのを見つけた。
その厳しい表情の先には想像を絶する厳しい現場が広がっているのだろう。
ぼくの匂い付き防寒着が役にたつとよいのだが。

3月末日
ぼくが抜ける穴の欠員補充をしないことと4月からT水の人事異動で一階ホームの人員が少なくなることを知らされた。
えーいっ立つ鳥跡を濁してまえ、こちとらパンクでえぃ!4月15日で辞めてやるぜー!と叫びたかったが、現場の混乱を避けて4月いっぱいまで働くことにした。
なんだかんだ言うてもやはり12年勤めた会社だ名残り惜しいという気持ちもないわけではないが、本当のところはわずか二週間くらいじゃ引き継ぎができるレベルまでに片付かないことに気付いたのじゃよ、この上もなく激しくとっ散らかってるのだよ倉の中もホームまわりも全てが。
だってぼくは毎日毎日仕事そっちのけで原発原発放射能なんだもん。お陰で最近はポカミスの多いこと多いこと。

「大将大将ほんでな、残っている有給休暇を40日くらいどーんと貰えまへんか?どーんと」
「ダメです」
チーン!マイナス35万円。
「けちんぼ!ならせめて締め日の5月15日に退職ということにしてその間の有給は付けてくれ!」
ゴールデンウィークがあるさかい何日ぶんもないからそんぐらい付けたるわ」
チーン!プラス8万円くらい。

「自己都合退社なので退職金は満額でません」
「えっ…そこをなんとかなりまへんか?どうか一つお代官さま大岡裁きでなにとぞなにとぞ」
「ダメです」
退職金で借金を返済するという肉を斬らせて骨を断つ作戦が脆くも崩れ落ちた瞬間である。チーン!orz