ホッケとフジコとコルトレーン

ラッパ友達のTちゃん家に遊びに行った。
手料理がテーブルにずらりと並ぶ。
肉じゃが、竹の子きのこ炒め、鳥の煮込み、菜と油揚げ炒め、柚子の効いた白菜漬け。
芋焼酎を呑みながらムシャムシャがつがつと食う。
関西仕込みの薄味、絶妙な塩加減、どれもこれも美味い。

安い食材で旨いものをこしらえるのがTちゃんの最大のこだわり。
思わず俺はTちゃんの手をとり
「この先ずっと君の手料理で、生きてゆきたい」と囁きながら、そっと肩を抱き寄せた…、
と、なるところやった。
けど、そうならなかったのは、Tちゃんが家庭持ちであることと、中年の男性であることによる。
これがもし青年の女性ならば、あんなことやこんなことが…
イマジン…愛と平和。
俺とTちゃん夫人のMさんは、次から次へとテーブルに登場する料理をつつきながら、
フジコ・ヘミングをとば口に芸術の在りかを語る。
Tちゃんは、ホッケを焼いたり「奇跡のカンパネラ」をかけたりと大忙しの大活躍。
「食事が終わったら、これを見よう」と俺が高らかに掲げたのがDVD「ジョン・コルトレーンの世界」。
Tちゃんは、大のソニー・ロリンズ好き、そして、大のコルトレーン嫌い。
今日俺の目的は彼をコルトレーン側に落とすこと。
さあさあ、飛び込んでらっしゃい、音楽を越えた世界へ!
鈴を振って宇宙へ行こう!
ふっふっふっふっ、ヒっヒっヒっヒっ…